~目次~
日常系・空気系とは?
![けいおん](https://shimaarashi.com/wp-content/uploads/2023/02/image-30.png)
2000年代半ばから、「登場人物たちの日常」を「特に大きく盛り上げることもなく」描いている作品が登場し、
「日常系アニメ」、「空気系アニメ」という名前で呼ばれはじめ定着した。
その先駆けと言われる作品が『らき☆すた』である。
この物語の中心は、女子高生のまったりとした普通の日常生活で、
キャラクターの他愛のないおしゃべりが繰り返されるだけのシーンが多く見られる。
この時期にヒットした涼宮ハルヒのような、世界をも揺るがす大事件が発生するわけでも、
超能力をもったキャラが登場するわけでもない。
それどころが、学園アニメでは必ずといっていいほど存在する恋愛に関する描写も一切見られない。
小さな出来事に一喜一憂する「ごくごく普通の学生」の「当たり前の日常」が描かれていくのである。
そして後の大ヒット作品「けいおん!」においても、
軽音学部でのバンド活動という背景がありながら、
血のにじむような練習(そもそも練習風景さえあまり描かれていない)とか
メンバー同士の対立といった定番の要素がほとんど見当たらない。
つまり、日常系アニメは、物語の起伏に乏しく、
困難や葛藤、対峙、恋愛といった、
従来の作品にあるような「大きく盛り上がる要素」を排除したものであると理解することができるのだ!
なぜ『らき☆すた』、『けいおん!』はヒットしたのか ?
セカイ系作品への反動
![コードギアス](https://shimaarashi.com/wp-content/uploads/2023/03/image-7-1024x507.jpg)
これらの作品がヒットした要因として挙げられるのが、
「セカイ系」作品に対する反動というものが挙げられる。
セカイ系とは?
「『新世紀エヴァンゲリオン』の影響を受け、巨大ロボットや戦闘美少女、
探偵など、オタク文化と親和性の高い要素を作中に導入した上で、
若者の自意識を描画する作品群。
その特徴のひとつとして、『世界』という単語が頻出することから、このように命名されたとされる。
2000年代の、代表的な「セカイ系」作品の例として、
『コードギアス 反逆のルルーシュ』、『天元突破グレンラガン』、『最終兵器彼女』などが挙げられる。
涼宮ハルヒもセカイ系の要素が強いように思う。
![涼宮ハルヒの憂鬱](https://shimaarashi.com/wp-content/uploads/2023/03/image-1.jpg)
これらの作品は、物語が大きい割には、今この世界では何が起こっているのか、
戦争が起こっているようだが、登場人物たちにそれぞれどのような思惑があるのか、
その他細かい設定など語られない部分が多い。
その説明されない設定の山を理解していなければ物語を正確に理解することが難しい場合も多くある。
そのうえ、1話ごとにめまぐるしく変化するストーリーを必死で追いかけ続けなければならない。
その説明不足な部分をあれこれ考察して楽しんだり、
気の抜けないストーリーにハラハラしたりするのもアニメの醍醐味かもしれない。
しかし「セカイ系」作品を見続けてきたファンにとっては、物語の大きさと難解さに疲れてしまうかも……。
日常系作品の登場
![日常](https://shimaarashi.com/wp-content/uploads/2023/02/image-31.png)
そんな時に登場したのが「日常系」作品である。
物語を必死に追いかけることも、難しい設定 や伏線を理解することも必要ない。
「セカイ系」に疲れてしまったアニメファンにとって、
頭を空っぽにして楽しむことができるジャンルが生まれたのである。
ネットメディアの普及
「セカイ系」に対する反動の他に、人気を加速させた要因として、
ブログ、SNS、ネット掲示板などのネットメディアの普及が挙げられる。
元々、アニメファンとパソコンユーザーが近い層にあるせいか、
これらのメディアでの交流によりファンサイトの開設やオフ会の開催など、ファン同士のつながりが強くなっていった。
このようなコミュニティの形成も『らき☆すた』、
『けいおん!』の人気に拍車をかけるきっかけとして考えることができるだろう。
さらに動画共有サイト「YouTube」やニコニコ動画が日本で普及し始めた時期とも重なって、
アニメの視聴形態が変化し、見逃した人や放送地域外の人も視聴することができるようになったのも人気拡大の一因である。
心理的ハードル
![涼宮ハルヒの憂鬱](https://shimaarashi.com/wp-content/uploads/2023/03/image-4.jpg)
また、「日常系」作品のような、短いエピソードの連続によって描かれる作品構造にはある特徴がある。
「セカイ系」作品は、スピード感のある展開で視聴者を惹きつけ、
物語の最後まで飽きさせないように見せ続けている。
しかし一方で、視聴者側は一回でも見逃してしまうと、ストーリーがわからなくなってしまうというリスクがある。
それに対して「日常系」作品は、たとえ1話見逃したとしても大きな支障はなく、途中参加の敷居も低い。
第1話を見なければストーリーがまったくわからないような作品と比べると、
作品に触れる上での心理的ハードルは低いと言えるだろう。
この視聴者が途中参加しやすいという作品構造を突き詰めると、
ストーリーを盛り上げるためのイベントを排除することにもつながる。
ここで言うイベントとは、困難との対峙や葛藤、恋愛といった要素が挙げられるが、
これらは時系列に沿って解決・変化していくものであるため、短いエピソードの連続という構造が維持しづらくなってしまう。
「日常系」作品において、主人公の明確な成長が見られないのも、そういったことも関係しているのかもしれない。
このようにお試しで視聴しやすい、作品を見る上での心理的ハードルという点で、
多くの人に受け入れられるようになったと考えることもできるかもしれない。
聖地巡礼ブームの礎
![らき☆すた](https://shimaarashi.com/wp-content/uploads/2023/02/image-28-1.jpg)
「アニメ聖地巡礼」という言葉が市民権を得たのは、
2007年4月に放送が始まった『らき☆すた』がきっかけだ!
『らき☆すた』の制作会社である京アニは、特定の地域の風景を参考にしつつも、舞台として設定することはなかった。
アニメに描かれるのはあくまで架空の町であった。
しかし、『らき☆すた』では埼玉県春日部市周辺を舞台のモデルとして設定した。
作中の登場人物である柊つかさ、柊かがみ姉妹は神社の宮司の娘という設定で、
オープニング映像や本編の中でも、神社が登場する。
鷲宮神社にファンが殺到!
![らきすた](https://shimaarashi.com/wp-content/uploads/2023/03/image-6.jpg)
この神社が、鷲宮神社に似ていると言われ、放送開始直後からファンが自然発生的に鷲宮神社を訪れ始めた。
最初のうちはたいした人数ではなかったが、
雑誌や新聞などにも取り上げられ7月頃には神社を訪れるファンが急増した。
そして鷲宮町では、『らき☆すた』ファンを受け入れて、町おこしを積極的に行っていった。
このように、作品に舞台を設定することは、その作品の熱心なファンによる「聖地巡礼」を促す効果があることが確認された。
『らき☆すた』以降、各地に存在する作品舞台の情報を集めた記事や書籍が急激に注目を浴びるようになっていき、一種の社会現象となった。
さいごに
今回は『らき☆すた』や『けいおん!』の事例から、
日常系アニメが人気になった理由について考察していきました。
筆者自身もバトルアニメに疲れた時にほっと一息できる、日常系作品は大好きです(^o^)
そういったヒットの背景や聖地巡礼なんかの知識も身につけて、
今よりももっとアニメが楽しめるようにしていきましょう!